CEDEC2018の講演を聴いた感想(タイムシフト)
CEDEC2018
国内最大レベルのゲーム開発者カンファレンス,CEDEC2018のタイムシフトパスを購入し,いくつか講演を聞きました. https://2018.cedec.cesa.or.jp/ 去年のCEDECでゼルダの講演でCEDECの存在を知り,今年申し込んで見たという感じです.
その中でも興味のある講演をいくつか聴いたので内容をまとめました.
明快で軽快なUI『Nintendo Switch 本体機能』の制作事例
https://2018.cedec.cesa.or.jp/session/detail/s5abdde297aa0e
任天堂の方々による講演です. NintendoSwitchにおける本体機能のUIをどう作ったか,ということに関するものでした.
良い例と悪い例の具体的な例があり,とてもわかりやすい講演でした. ポイントは次の通り.
- WiiUまでは多機能であることを重視していたが,現在はスマートフォンなど似たデバイスは溢れている
- そこで,「ゲームで遊ぶこと」に特化するUIを作るため
- 圧倒的に明快にする
- 簡単そうと思ってもらう
- ゲームやサービスを「混ぜない」ようにする
- 主役であるゲームの「アイコンを大きく」「絵の密度を大きく」
- 他の機能も直感的に使えるよう「上下の意識」
- 上がマクロ,下がミクロ
- 数を少なく見せるために「グルーピング」
- ガイドラインを迷わないようにする
- 迷いそうなルールの例
- カーソルの選択においてどのボタンに移るか?
- 基本的にはボタン配置をグリッドに固定した
- どの種類の効果音を使うか?
- 「案内」と「消去」でそれぞれ作っても,じゃあ「終了」はどっち?となる
- 効果音の種類を「正常系」「エラー系」「警告」の3つに制限
- 視覚と聴覚を一致させるよう見た目も統一
- カーソルの選択においてどのボタンに移るか?
- 迷いそうなルールの例
- 簡単そうと思ってもらう
- 圧倒的に軽快にする
- UIにかかる時間をできる限り削る
- 車が停止する流れと同様,「ユーザの理解」「ボタンの操作」「システムの処理」の3つのフェーズが存在
- これらの合計がUIにかかる時間
- システムの処理
- リソース読み込みを極限まで減らした
- アニメーションをゼロにしたらどうか?
- そのままだと何が起きたかわからないので,0.2s程度に
- ボタンの操作
- カーソルの初期位置を確定とキャンセルどちらにするか
- 確定側にすることでユーザの操作数を減らした
- 基本ユーザの操作を「信頼」し,確認は「端的」に行うように
- 良いコミュニケーション
- ユーザの理解 = 発見の速さ
- アイコンは必要か?
- Switchでは言葉のみにした
- ダイアログが出ると,ユーザはその言葉を頼りに探す
- アイコンがあるとアイコンを見てしまうが,わかりづらいアイコンがあるとアイコン → 文章という目の動きが発生してしまう
- 斜め読みしやすい文章にした
- 左上と右下だけ読めば何をすれば良いかわかるように
- アイコンは必要か?
- システムの処理
- 快適にする
- これまでは不快を減らす話,これは快を増やす話
- 操作音の心地よさを生み出す方法
- 移動:ボタンの種類で音を分けた
- 決定:いくつか種類があるが,「カチッ」のうち「カ」と「チ」のテンポを揃えることで連続操作でも違和感がないように
- 遷移
- 遷移前には「繊維するよ」遷移後には「遷移したよ」と音のつながりを作った
- 画像への遷移時には画像を選択する音に似た遷移音,設定への遷移時には設定の選択時の歯車音を使った遷移音を採用
- 触りたいを作る
- 圧倒的に明快にする
「どこから作ればいいんだろう?から10年」
https://2018.cedec.cesa.or.jp/session/detail/s5b1e23aaede0a
任天堂の代表取締役・フェローの宮本さんの講演. 基調講演であり,10年を振り返りながら話すスタイルでした. BotWをはじめとするゴールが明確でないゲームやモバイルの普及による課金型ゲームについての話などでした. 詳細は割愛.
ワンランク上のゲームデザイン・レベルデザイン・UIデザインを考える 「コンテキスト」「コンフリクト」「コントラスト」デザイン
https://2018.cedec.cesa.or.jp/session/detail/s5ac06de06756a
Slideshare↓↓↓
ワンランク上のゲームデザイン・レベルデザイン・UIデザインを考える 「コンテキスト」「コンフリクト」「コントラスト」デザイン
Unity Technologies の大野さんの講演. ゲームデザイン系の講演を初めて聞くのでとても面白かったです.
- コントラスト
- 難易度などにメリハリをつける
- 線形にあげるのではなく,上下させたり急にあげたり
- 詳しくは昔のセッション参照
- コンテキスト
- プレイスタイルやゲームに必要な知識,操作方法など
- ハイコンテキストとローコンテキストがマッチしていない事例
- ゲームが面白くない
- コンテキストの相性が悪い可能性
- モバイル・コンシューマ・PCのプレイスタイルの違い
- コンテキストの相性が悪い可能性
- 新しいゲームシステムを作ったが評価が悪い
- コンテキストのレベルが悪い
- 売れるゲームは入り口がローコンテキスト(前提知識不要)出口がハイコンテキスト(奥深い)
- 徐々に狭まるのが良い
- 新しい要素を入れると急にローコンテキストやハイコンテキストになる恐れ
- 売れるゲームは入り口がローコンテキスト(前提知識不要)出口がハイコンテキスト(奥深い)
- コンテキストのレベルが悪い
- ゲームが面白くない
- コンフリクト
- プレイヤーの目標達成を妨げるもの
- 種類
- 接近・接近:どっちにするか
- 回避・回避こっちもダメ,あっちもダメ
- 接近・回避:これはいいけどこっちはだめ
- 複数のことを同時にやらせるとコンフリクトが起こる
- 自発的:ユーザが選択可能
- 敵の奥の宝箱
- 強制的:選択不能
- ボス線
- 自発的:ユーザが選択可能
- ゲームのコンフリクト
- 目的のコンフリクト(クリア or ハイスコアetc)
- 敵のコンフリクト(どれから倒すか? etc)
- 行動のコンフリクト(宝箱を取りに行く or 先に行く etc)
- 選択のコンフリクト(どちらの道を選ぶか,選択肢が多すぎるとストレスになる)
- 消費のコンフリクト(このアイテムを使うか否か)
- ゲームは人生に必要か?
- YESと考えている
- プレイヤーの本質を自己確認できる
- メディアで唯一?
コンフリクト周りの話はこれまでプレイしてきたゲームを考えても納得する内容でした. 任天堂はこれを作るのがとても上手だそうな.
フィールドとモンスターの制作工程から読み解く「モンスターハンター:ワールド」のゲームデザイン
https://2018.cedec.cesa.or.jp/session/detail/s5abe362fd7694
株式会社カプコンの徳田さんの講演. モンハンはプレイしたことがない(やりたい)のですが,モンハンという世界を作る裏側のような内容でした.
- MHWのミッション
- 初めての人でも楽しめる(シリーズの知識を必要としない)ため新大陸に
- オープンフィールド
- 広さではなく密度を重視
- フィールドのレベル設計
- 序盤:古代樹の森
- 森なのでわかりやすい,難易度が高いところは湿度を高めにしてヤバさをわかりやすく
- 瘴気の谷
- 竜の墓場,エネルギーを求めるモンスターが集まる
- 大蟻塚の荒地
- ワイド感を表現
- 中盤:陸珊瑚の台地
- 歴代にはない驚きを与えるためのフィールド
- 慣れているユーザにも驚いてもらう
- 陸珊瑚というファンタジー要素
- 歴代にはない驚きを与えるためのフィールド
- 終盤:龍結晶の地
- 古竜の集まるボスMAP
- 序盤:古代樹の森
- モンスターの作り方
- モンスター=プレイヤーを適度に追い詰めて,倒した後に気持ちよくなる存在
- 何度戦っても,どの武器で戦っても面白いようなモンスター
- モンスターづくりの2大ポイント
- インパクト
- 感情を動かすことで倒した後の気持ち良さを増幅させる
- インパクト
- 攻略
- プレイヤーに選択肢を持たせ,何度遊んでも新たなアクションの可能性が生まれるようにする
上のゲームデザインの講演を聞いた後だったので,なるほどなぁと思える内容も多かったように思います. アクションの可能性とかもコンフリクトの一つであり,うまく選択肢を選ぶと報酬(短いタイムetc)が得られたり. 基本的にはローコンテキストでありながら,中盤に新しい内容を持たせることでハイコンテキストに. 最後がボスマップなのはお決まりなんでしょう(多分) ゲームを作ってみたくなる…
終わりに
ゲームデザインって面白いですね. というか設計行為自体がやっぱり面白い. ゲームに限らず,アプリのアーキテクチャとか. 時間がない中タイムシフトでみたのですがまあこれだけ見れれば元が取れたかなという感じ. (欲を言えばもうちょい任天堂の講演を聴きたかった…)